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(4)ANP
車で走行している場合、自分が道路幅のどこを走っているかはセンターラインや路肩を基準に判断することができる。ところが飛行機では、そのような目視できる基準点は無いので、真の位置からの誤差をリアルタイムで知ることは不可能であった。
これまでは考えうる誤差を累積して、最悪の場合でも安全間隔が確保できるよう広大な空域を1機に割り当ててきた。洋上管制区では1機が関東平野に相当する空域を占有していたのである。交通容量の拡大に対応するためには管制間隔を縮小することになるが、安全確保の観点から機体の航法誤差を正確に知ることが重要である。
ANPは機体の航法機器が有する航法精度の指標であり、例えばANPが0.05とは、FMCが計算した現在位置を中心に半径0.05NMで示される円の中に自機が95%の確率で存在することを意味した。図2.1.1.2−4のようにRNP2.00、ANPが0.05であればこの空域を飛行する基準は十分に満たされている。
もしその空域の飛行に要求されるRNPよりANPが大きくなったら、FANS−1対応のFMCでは自動的にWarning Messageが表示され、パイロットに知らせる。管制官は必要に応じて他の航空機との間に大きな管制間隔を設定する。横の間隔が設定できなければ高度を変更することで安全性を確保することもあり得る。
機体に搭載されたFMCは内蔵しているRNP/ANPに関するデータベースを利用して各々の航法センサー(GPS,IRS,DME等)の信頼度を算出する。
ANPの計算には航空機の対地速度やセンサーの数、位置などが影響する。つまり速度の遅い船舶であれば、同じ条件であっても航空機より良いANP値が表示されるであろうし、計算に使用している複数のGPSの相対位置が適切でなければ誤差も当然増えるであろう。結局ANPとは、それぞれの航法施設の固有精度と航空機から見た各施設への相対位置によって計算された(確からしさ)と言える。

 

 

 

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